建築基準法を守らぬは大凶

今年は耐震強度偽装問題が世間を騒がせ、住まいづくりや住まいの購入をされる方々にも、大きな衝撃を与えた年でした。法律で定められた建物の強度が、きちんと守られていないなどということは、本来あってはならないことです。しかし、全国から鑑定に訪れる方々の図面を拝見していると、強度の偽装まではないものの、かなりの頻度で「建築基準法」に違反しているのを目にしてしまいます。中でも多いのが下記の図面のようなケースです。

この図面の北側にある2部屋は、それぞれ寝室、子供室と表記されています。一見特に変哲のない図面ですが、ポイントは北側の隣地境界線から建物までの距離。実はこの距離が短いために、この図面は建築基準法に違反してしまっているのです。



建築基準法には「採光」についてのルールがあり、隣地境界線から定められた距離(用途地域や屋根の軒の出、窓の形状など、さまざま要因で変わってきます)がとられていないと、人間が健康で快適に暮らすために必要な光が、室内に入らないと判断されてしまいます。たとえ、この北側の土地が空き地であって、実際には十分光が入る状況であっても、採光上は「違法」となり、家を建てる許可はおりません。建築基準法では、現時点での周囲の状況には関係なく、あくまでも自らの敷地の中で採光を確保することが要求されます。

しかし、たとえばこの2部屋が、ともに押入れをなくして「納戸」と表記されていれば、この図面は違法にはなりません。寝室や子供室は、人が生活する「居室」ですから採光が必要です。ですが納戸であれば、居室ではないために、建築基準法上採光は必要ないと判断されるからです。

部屋の表記ひとつで違法にも合法にもなる、これが法律の落とし穴というもので、そのことを施主のみなさんが知らずにいることが、私が最も危惧している点です。実際に、このような図面をお持ちになった方たちに、「この図面では家は建ちませんよ」とその理由をお話しすると、ほとんどの方が設計者からの説明を受けておらず、初耳だったと言われます。上記の図面のようなケースはまだ正直ですが、採光が不十分な部屋はすべて「納戸」として、行政に申請してしまう業者もあるのです。

図面に部屋の表示をせずに打ち合わせを進めたり、寝室としてプランづくりをしていたのに、できあがった図面を見たら「納戸」になっていたりという話もよく聞きます。採光という建築基準法のルールや、なぜ居室に採光が必要なのかという根本的な説明をせず、「申請のために図面には納戸と書いてありますが、建築後は寝室としてお使いください」で済ませてしまう業者も実に多いのです。

施主の側が無理を言っているケースもあります。どうしても、もう一部屋居室がほしいとか、敷地いっぱいに建てたいなどと要望を出すことで、業者側が苦肉の策として行ってしまうケースもありますね。部屋が増えたり、敷地いっぱいに建てられることは、施主の側にとってもたしかに都合の良いことでしょう。

しかし、実際に生活するうえでは、隣地境界線と建物との距離が離れていなければ、光だけでなく風通しだって当然悪くなりますね。また防犯上も、死角になりやすい場所をつくってしまうでしょうし、近隣からの視線や音が気になることもあるでしょう。採光のルールひとつでも、それを守らないことは、同時にいくつもの住み良さを失ってしまうことになるのです。

希望どおりに住まいを建てたいと思うと、時に建築基準法のルールは、その妨げとなってしまうこともあります。しかしそのルールは、人が健康で快適に、そして安全に住まうことのできる住まいをつくるためのもの。その骨子は、住まい手の健康や安全を願う家相と同じであり、建築基準法にある多くのルールは、家相の「理にかなう」考えを基にしています。そのルールを最低限守ることが、吉の住まいをつくるための基本であるとお考えください。

そのためには、施主側の心構えもまた大切であり、建築基準法のルールや重要性をきちんと説明してくれる、プロ意識のある設計者や業者を選ぶこともとても大切ですね。次回は、そんな住まいづくりのプロの選び方について、お話をいたしましょう。

小池康壽の家相学では、「建築基準法は、家相と同じく人の健康や安全を願うもの。業者も施主もこれを守る気持ちがこそが大切なり」と申し上げておきましょう。