| 家相では鬼門に次いで気にされることの多い「張り」と「欠け」。簡単にいってしまえば、建物の形の凸凹部分のことですが、定義どおりに説明すると、「張り」とは建物の一辺の長さの3分の1以下の出っ張りをいい、それ以上出っ張っている場合は、逆にへこんでいる部分の「欠け」と見ます。そして、この凸凹がどの方角にあるかで、病気になるとかお金が出ていくとか、はたまた子供が出世して家が栄えるとかいわれています。
しかし、前回の鬼門と同じように、建物の凸凹で病気になったり、散財したり、子供が出世したりするようなことはまずありません。張り・欠けについてよく耳にすることも、鬼門の脅しめいた言い伝えと同様、やはり家づくりにおいては「迷信」と考えてよいことです。
建物に欠けがあると良くないからと、急遽予定坪数を大幅に増やしたり、よい方角だからと無理に張りをつくったりする話もよくありますが、予算をオーバーすればそのぶん負担も大きくなり、金銭的にも精神的にも不安を抱えて、家づくりをスタートさせなければなりません。また、いくら吉の方位だからといっても、無理に張りをつくればそれこそ散財ですね。建物の欠けをなくすために、もっと大切なものが欠けてしまっては元も子もありません。
しかし、鬼門も太陽の当たり方など、方角が持つ特性は気にしてほしいというお話をしましたが、張り・欠けも同じように、別の意味で気をつけてほしいことはあるのです。
極端な例ですが、こんな形の家を計画したとしましょう。基礎の形も複雑、外壁の面積も増え、屋根の形状も複雑になりますね。当然建築費用もかさむでしょうし、屋根が複雑になるぶん、雨漏れを起こしやすくなるおそれもあります。
また、凹み部分が死角になりやすい場合は、泥棒の侵入口として狙われるおそれもあります。このような極端な形は少ないものの、張りや欠けが住まいの良し悪しにまったく影響しないわけではありません。雨漏れの補修や、万一盗難に遭ってしまったことなどを考えれば、お金が出ていくというのも、まんざら迷信ではなくなってしまいますね。
さらに、張り・欠けが大きく影響してくるのが建物の耐震性です。2004年10月に、兵庫耐震工学研究センター(E−ディフェンス)が完成しました。ここは、世界最大の実物大建物の耐震実験ができる施設です。テレビ番組でも特集していましたので、昭和30年代の建物を移築して行われた振動実験の様子を、ご覧になった方も多いと思います。建物の小さな凹凸部分が、いちばん最初に破壊した様子が印象的でした。小さな張り出しの部分に大きな負荷がかかったのでしょう。阪神大震災のときには私も現地に行きましたが、破損した建物の多くが、その変形部分に影響を受けていたことが多かったことを記憶しています。
http://www.bosai.go.jp/hyogo/index.html
独立行政法人 防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター
 |
 |
|
|
張り・欠けは、出世や病気には関係ありませんが、建築費用の増加や、建物のメンテナンスには大いに影響が出てきます。また、極端に変形した建物は、その一部に大きな負担がかかることも事実のようです。ならば、真四角の家なら大吉だと単純に思われる方も多いのですが、施工技術の進んだ昨今では、よほど変形した建物形状でない限り、きちんとした耐震性能を確保した住宅メーカーや工務店を選ぶこと、また凹凸が適度にあっても、住まい全体で強度をしっかり確保することが大切だと認識した設計者と出会うことのほうが、私は大切だと思っています。張り・欠けで真に注意すべきは、病難、散財、出世などの吉凶ではなく、建物の耐震性や耐久性、防犯性なのだということ、くれぐれも忘れないでくださいね。
|