台所の家相

家相の古書には、台所に関する記述もまた多くあります。

「家の中央に台所を造るは忌むなり」。これは、家の真ん中の台所は好ましくないといっているものですが、井戸水を汲み、かまどに火を焚いて炊事をしていた時代には、確かに使い勝手が悪すぎる台所ですね。木造で通気性のよい住まいだったとはいえ、やはり煙や臭いも気になったことでしょう。

また、「竈(かまど)北向きにつくるは、物事損失多し。又病難をつかさどる、婦人経水病を発すべし」。この一節も、寒い北側に台所をつくると、主婦が冷えから病気になるから気をつけよ、と注意を促しています。冬の早朝、それも北側の台所とくれば、寒さも半端じゃありません。しかも床は土間ですから、冷えが高じて主婦が婦人病になってしまうおそれは十分にあります。

現代でも、台所の方位や場所については、何かと吉凶がいわれるものですが、これらの言葉はまさしく先人の教えといえるもの。中央や北側という場所、方位の特性からくる影響を考慮した「理にかなう」家相ですね。給排水や換気の設備、電気やガスのない時代には、方位や場所の条件をきちんと選ぶことは、家づくりにおいて最も大切なことであったでしょう。現代でも、もちろんそれは大切なことですが、現代にはさまざまな住宅設備機器があります。それらをうまく用いれば、家の中央の換気や北側の台所の寒さも、ずいぶんと心配は少なくなってきました。


しかし、設備がどんなに進化しても、現代でもなお注意してほしい先人の言葉もあるのです。それは、「厨(くりや)は未申(ひつじさる)に構えるは、大いに凶し」。「厨(台所)を南西につくるのは大凶だ」というこの言葉は、南西が裏鬼門であることもあって、現代でもよくいわれているものです。

そしてこの言葉も、南西という方位の特性を考慮した「理にかなう」ものであります。家相が江戸の庶民に広まりつつあった頃は、江戸特有の南西から吹く風で、大火が起きることが多かったようです。風上の南西の台所で火を使えば、それだけ火災のおそれも多かったわけで、そこから南西の台所が嫌われるようになったのです。そして、南西といえばもうひとつ、夏の西日の影響です。

台所は食べ物を扱う場所ですから、暑さと相性がよいわけはありません。特に、その都度使うぶんだけ調達していた昔と違い、食品を長く保管する現代こそ、この南西の暑さには注意が必要なのです。

しかし、家相相談に訪れる方々の図面を拝見していると、西側が道路でまともに日差しが当たるような場所でも、無神経に台所を配置している図面も多いのです。冷蔵庫があるから、エアコンがあるからといっても、四六時中エアコンを作動させ、すべての食材を冷蔵庫に入れるわけではありませんね。冷蔵庫に入れないものもありますし、何より食品は、日の当たらない涼しい場所に保存するのが基本です。南西は現代でも暑い場所、食べ物に不向きであることに変わりはありません。

新築でプラン変更が可能な場合は、西日がまともに当たる台所は大いに気にすべきでしょう。ホテルなどでの食中毒のニュースもちょくちょく報道されますが、プロの世界でも食中毒は起きてしまうのです。一般家庭では気づかないだけで、軽い食中毒を起こしていることもあるのです。また、暑さは主婦の体に負担を与えます。冷えるのもよくありませんが、暑い中での台所仕事も注意したいもの。暑くて火を使うことを避ければ、それもまた食中毒の原因にもなりかねません。

そして、台所は「暗さ」も気にしてほしいのです。家の中央や北側の台所を嫌った理由には、空気の汚れや寒さだけではなく、暗さもあるのだと私は考えています。暗くて食材の傷み具合を判断できないことや、ケガや火傷をする心配は現代でもありますからね。暗い場所の台所は、明るめの照明計画をすること。そして、センサー式の吊り元ライトを設置するとよいでしょう。手が濡れていたり、汚れていたりしても、台所に立てばライトが自動で点灯してくれますから、衛生面でも安全面でも吉の台所空間になると思います。

現代家相学では、「時代が変わっても台所暑き場所は苦手なり。日当たりよすぎる場所に設けるは大凶。風通しよく涼しい場所が吉となりけり。また、暗きことにも注意して、照明器具にて明るさ的確に確保するなり」、とお伝えしておきましょう。